2012年6月20日水曜日

『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』を見て

若松孝二監督の『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』を見た。
井浦新が演じる三島由紀夫に最初は違和感があったが、
見ている内に何となくこれもありかと思えてきた。
実際の三島はもっと猥雑だったと思うが、行動に純化していく
過程を描くには、このくらいの誠実さがないとダメだろう。
しかし体はちょっと貧弱すぎる。あの腹を切ってもあまり
有難味がない。ともに切腹する森田必勝を演じる満島真之介の
ほうがいい。三島を決起にむかって強引に引っ張っていくところに
説得力があった。

しかし、思うに三島が今の日本に生きていたら、
現在のわが国の状況をどう思うだろう。
故郷の山河を壊滅させた原発事故に対して誰も責任をとらず、
きちんとした原因究明もなされぬままに、
きわめて政治的な思惑で原発再稼働が決められていく、
この日本に対して吐く言葉はあるだろうか。
もしかしたら三島は、あの時代で死んで
幸せだったのかもしれない。
日本人が、まだ行動によって世の中を変えられると、
はかなくも夢みていたあの共同幻想の時代に。